キミコエ!WEBマガジン
声優 津田 健次郎 × 音響監督 清水 洋史 「未来の仲間に捧げるメッセージ」vol.2
2018年12月06日
絶対認めさせる!ぐらいのギラギラした若者に期待


津田 前回のキミコエ・オーディションはどんな印象でしたか?

清水 この仕事は一般の視聴者の方と接する機会がなかなかないから、まずはこんなにも声優志望者がいるのか!とビックリし、どんな人たちが声優を志しているか肌で感じることができて貴重でした。

津田 なるほど。

清水 声優って音楽や絵画と違って、アマチュアとして楽しむ層がいない。個人的には、一般人が休日に趣味で声優を楽しむような日が来ればいいと思っているんですけど、現状はアマチュア層という「プロの予備軍」がいないから、声優志望者という裾野が我々からは見えにくい。オーディションを通じてそういう人たちと出会うことができて、彼らがプロになる道筋を明示できるか考える、いいきっかけになりました。

津田 今回のキミコエ・オーディションのように、ある種のシステムが整えられるといいですね。

清水 一般的にはオーディションは一発勝負だけど、今回のようにオーディションで絞り込まれた選抜者たちへのレッスンも行うというのは珍しいんですよ。養成所で訓練してきた人も、まったくの初体験という人も、共通の課題で等しくレッスンを受ける。その指導を通じてどう成長するか、という伸びしろも目の当たりにできて面白かったですね。

津田 僕もドキュメント番組で見ました。「あの子がこんなに成長するんだ!」という成長過程を見られて興味深かった。レッスンを通じて彼らの日常も垣間見えますよね。

清水 前回は合宿中にバーベキューを開催し、選抜者たちの行動をカメラでモニタリングしたんだよ(笑)。

津田 バーベキューってその人の性格が出そう(笑)。

清水 そうやってずっと見守っているうちに選抜者たちへの思い入れが深まるから、最終選考ではこっちも感受移入しちゃって…。

津田 今回のオーディションは男性が対象だから、また違った雰囲気になりそうですね。

清水 おしなべて早熟な女性と違って、20代の男性ってまだ未成熟で荒削りだから、接する距離感を変える必要がありそう。自分が20代だった頃って、あまり思い出したくないでしょ?

津田 正直言って、一番キツイ地獄の時期でした(笑)。役者で食えないことは覚悟していたけど、一所懸命頑張っているのに誰にも認めてもらえない。それどころか、芝居を見てもらえる機会すらないのはキツかった…。

清水 同じ男性である彼らにとって僕らのような大人は「あいつを倒さなければ上に行けない!」っていう「父殺し」の対象になると思う。

津田 言われてみれば僕も20代の頃は「全員倒してやる」ぐらいのギラギラした気持ちを持ってましたよ。

清水 たいした武器にもならないのに、刺さりもしない爪を研ぐとか(笑)。20代の男ってそういう厄介な存在なんだけど、むしろ歯向かうぐらいの勢いがある人たちに応募してきてほしい。

津田 こっちも腹をくくる必要がありそう(笑)。でもそんな「なんだかワケの分からないもの」を抱えている人たちと会ってみたいですね。

清水 ところで、声優として成功するにはルックスが影響すると思います? 津田君を見れば訊くまでもないかもしれないけど(笑)。

津田 やめてくださいよ(笑)。声優に限らず役者というのは、スポーツ選手に近い気がします。声質や体格など持って生まれた要素にわりと左右され、スポーツ選手が抱える肉体の壁という残酷さをはらんでいると思うんですよね。女性でいえば、可愛いヒロインを演じたいと思っていても低音の声だとやっぱり厳しい。だからといってそこであきらめるのではなく、自分にしかできない新しいヒロインを目指せばいいんです。声優にルックスや肉体が大きく左右するのは確かですが、それを乗り越えられるものがあればいいんじゃないかな。

清水 同感です。前回のキミコエのレッスンで同じようなことを話しましたよ。役者はアスリートと同じで、生まれ持ったものに頼らざるを得ない。不平等ではあるけど、自分の声やルックスをまるごと受け入れて生きていくしかない、って。

津田 確かに、そうやって自分を認めるところが第一歩かもしれない。

清水 ただし役者がアスリートと異なるのは、アスリートはピークを過ぎれば戦いの場に立てないけど、役者は「10代の役」から「70代の役」までいくつものレーンが作品という同じトラック上に並んでいる。その中に自分のポジションを見つけられる可能性は誰にだってある。津田君が言うようにルックスは声優に影響するけど、そこですべてが決まるわけではないと思いますよ。


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