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声優 小野 賢章 × 音響監督 清水洋史 対談インタビュー vol.3
2022年01月27日
見届け人 小野賢章×清水音響監督
未来の仲間に捧げるメッセージ


③キミコエ・オーディション応募者に届けたいメッセージ

第3回キミコエ・オーディションの見届け人を務める声優・小野賢章さんと、審査員を務める清水洋史音響監督によるスペシャルトーク。第3回は、業界の第一線で活躍するお二人から、声優として大切なことやオーディションでのアドバイスを語っていただきます。

──声の仕事の現場で、どのような資質が声優に求められると思いますか?

小野「キャリアによって変わってきますが、新人であれば素直で真っすぐな芝居ですね。新人で主役を務めるケースも少なくありませんが、脇を固める方たちが柔軟に対応してくれるので、何も考えずに感覚で表現するくらいの気持ちで臨んだ方が良い演技が生まれるんじゃないでしょうか」

清水「私たちが今こうして話している言葉は誰かが作ったもの。いわば言葉を借りて使っているようなものだから、言葉に対する理解を深めることはとても重要。そのためにも、アニメに限らず本などの書き言葉も含めて、自分にとって的確な手本を貪欲に探して呑み込むことが大切です。そして、その手本を吸収しながら乗り越えようという野心も重要。そんなアグレッシブな精神を持った人にキミコエ・オーディションへ応募してほしいと思います」

──明確な目標を持つことが大切ということですね。

小野「僕は仕事もお金もない時期があったから、『一番忙しい人になりたい』というのが目標でした。忙しくなるには仕事をたくさん頂かなければいけない。そのためにどうすればいいかを貪欲に考えていました」

清水「実家から出して一人暮らしさせた親に感謝しなくちゃね」

小野「ただ、将来の目標を持つことは大切だけど、まだ何もやってない新人が明確なイメージを持つことは難しいでしょう。例えば自分が目指すジャンルにしても、コメディもの、ハーレムもの、シリアスものとか、何が自分に向いているかはまずやってみないと分からないものです。だから声優を目指す皆さんには、あまり細かく目標を立てるよりも『芝居が好き』という熱意をぶつけてほしいですね」

──熱意をぶつけること以外に、キミコエ・オーディションの応募者たちに求めていることやアドバイスしたいことはありますか?

小野「アニメに出演するようになって気づいたのですが、マイクの前に立って台詞をしゃべる時というのは、本人が思っているよりテンションが低くなりがち。舞台ではそういうことがないのに、恥ずかしくてテンションを無意識に抑えてしまうのか、僕自身もいまだに課題として感じています。そうした殻を破るのはとても勇気がいることだし、オーディションだとなおさら緊張するかもしれません。でも、選考する方々はそのことを大前提として見てくださるので、ダメな姿を見せてもいいからまずは自分が納得できるものを発揮してください。小手先のアピールよりも、自分が悔いの残らないようパワーをぶつけるのが一番です」

清水「同感ですね。演技というのは“自分ではない何かになること”だけど、そこにいるのは自分でしかない。いわば演技は、自分が自分でしかないことを確認する作業。役というパーソナリティを演じることは、自分と向き合い、他人に自分を伝えることでもあります。だからオーディションで緊張するのは当たり前のことなんです。そこで見えない壁に対して演技をするのではなく、自分のことを他人に余すところなく伝えようという姿勢を見せてくれると、きっと私たちの心も動かされると思います」

──今回のキミコエ・オーディションでは「声のチカラ」だけでなく自己発信力・プロデュース力のある方を求めているとのことですが、これはどのような点に注目して審査するのでしょうか?

清水「役者は脚本を自分で書くわけではなく、脚本の中で与えられた立場を突き詰めていくもの。そうした中で役者に求められる自己発信力というのは、周りに『この人をもっと知りたい』と思わせることです。例えば、言葉に出さなくてもその人から感じられる情報ってありますよね。『不機嫌そうだな』『困ってるな』とか。そうした情報で興味を持たせることによって、役者が動いた時に『この人は次に何をするんだろう。何を言うんだろう』と周りも注目するわけです。つまり、その人の存在自体からから出てくる空気感のようなものに目を向けさせることが自己発信力であり、役者が備えるべき資質でもあります」

小野「確かに、自分のことを言葉であれこれアピールされるよりも、存在から出てくる情報の方が心を動かされますね」

──最後に小野さんから、見届け人として応募者へのエールをお願いします。

小野「僕は今回のオーディションにおいて“いい声かどうか”というのはあまり関係ないと思っています。『自分はそんなにいい声じゃない』なんて心配せず、いっぱい汗をかいて恥ずかしい思いをして、自分をさらけ出すつもりでオーディションを楽しんでください」